教員を辞めた後の手続き|年金・住民税・財形でしんどかったことを全部書く

教師を辞めた話

教員を辞めた後の手続きは、退職金の受け取りだけは拍子抜けするほど簡単で、年金の切り替え・財形貯蓄の解約・住民税の支払いといったお金回りの手続きが、想像していたより何倍もしんどい。これが、退職を経験した私の結論です。

私は公立学校の教員でしたが、適応障害と診断されて9ヶ月休職し、29歳の年度末に退職しました。この記事では、教員の退職後に必要になる手続きを、私がしんどかった順に、一般的な制度の説明と私自身の体験を分けながら全部書きます。いま辞めたい、休みたいと思っている先生が、少しでも見通しを持てるように。

結論:退職金は簡単だった。しんどかったのは「お金回りの手続き」

先に結論から書きます。教員を辞めた後の手続きで本当に身構えるべきなのは、退職金ではありません。年金・健康保険・住民税・財形貯蓄といった、お金回りの手続きです。退職金の受け取りは簡単だった一方で、それ以外のお金の手続きは全部しんどかった。これが私の実感です。

在職中、この辺りのお金は全部、給料からの天引きで自動的に処理されていました。年金も保険も税金も、自分では何もしなくても学校の事務と制度が回してくれていた。ところが退職した瞬間に、その全部が「自分の仕事」になります。9ヶ月の休職を経てそのまま退職した私にとって、これは想像以上に重い仕事でした。

私がしんどかった順に並べると、次のようになります。

  • 国民年金への切り替え(役所の窓口での手続き)
  • 財形貯蓄の解約
  • 住民税の支払い(納付書で自分で払う)

一般的に、教員を辞めた後に必要になるお金回りの手続きは、おおむね次の通りです(自治体・共済組合により異なります)。

  • 年金:国民年金への切り替え。一般に退職日の翌日から14日以内に市区町村の窓口で行います
  • 健康保険:共済組合の任意継続(一般に退職後20日以内に申請)か、国民健康保険(一般に14日以内)かを選びます
  • 住民税:給料からの天引きが終わり、納付書で自分で払う方式に変わります
  • 財形貯蓄などの貯蓄関係:解約や払い出しの手続きが必要になります
  • 失業給付:公務員は雇用保険の対象外のため、民間のような失業手当は原則ありません

気をつけたいのは、年金の14日、任意継続の20日のように、期限が短いものがあることです。退職日が決まったら、期限のある手続きだけでも先にカレンダーへ書き出しておくと、辞めた後の自分がかなり助かります。細かい条件は勤務先や自治体によって違うので、正確なところは在職中に事務の担当の方へ確認しておくのが確実です。

こうして一覧にすると、単なる事務作業に見えます。実際、元気な人なら数日で終わるのかもしれません。ただ、教員を辞めるときの多くの人は、元気ではありません。私も、適応障害の診断を受けて9ヶ月休職した末の退職でした。手続きの難しさそのものではなく、「回復しきっていない心と体で、慣れない手続きを一人でやる」ことがしんどいのだと、経験して初めてわかりました。ここから、それぞれの手続きについて、一般的な制度と私の体験を分けて書いていきます。

一番しんどかった手続き:国民年金への切り替え

結論から言うと、手続き自体は「役所の窓口に行って書類を出すだけ」です。それなのに、私にとってはこれが一番しんどい手続きでした。

一般的な制度:退職から14日以内に市区町村の窓口へ

公立学校の教員は在職中、共済組合を通じて厚生年金に加入しています。退職して次の勤め先が決まっていない場合や、私のように個人事業主になる場合は、国民年金(第1号被保険者)への切り替えが必要です。一般に、退職日の翌日から14日以内に、住んでいる市区町村の役所の年金窓口で手続きします(自治体により案内が異なります)。

持ち物は一般に、退職日がわかる書類(資格喪失証明書など)、基礎年金番号がわかるもの(年金手帳など)、本人確認書類です。保険料は月におよそ1万8千円で、年度によって変わります。支払いが難しい時期には、免除や納付猶予の制度も用意されていて、認められた期間の分はあとから納め直せる仕組みもあります。窓口で「退職したので国民年金に切り替えたい」と伝えれば、あとは案内に沿って書類を書くだけです。

なお、14日を過ぎてしまっても罰則はありません。ただし放置すると未納期間が生まれ、将来の年金額が減ったり、万一のときの障害年金に影響したりする可能性があるとされています。裏を返せば、遅れても取り返せます。気づいたときに手続きすれば大丈夫です。

私の場合:「平日の昼間に役所へ行く」が、あんなに重いとは

私は退職後、個人事業主として塾を始めたので、この切り替えが必要でした。窓口に行けば終わる。書類を出すだけ。頭ではわかっているのに、当時の私にはそれがひどく重かったのです。

休職中の私は、子どもたちや保護者に会わないように昼間に散歩をして、あとは家でゴロゴロして過ごすような状態でした。最初の頃は、転職のために公務員試験を受けようとしたり、資格の勉強を始めようとしたりしても、しんどくて何もできませんでした。そういう時期を経てすぐの退職です。「役所に行く」という一歩が、健康なときの何倍も大きく感じられました。

もし今、同じような状態で退職後の手続きを前にしている方がいたら、伝えたいのは「1日1つで十分」ということです。全部の手続きを1週間で終わらせる必要はありません。今日は年金だけ。それができたら、その日は上出来です。どうしても動けない日が続くなら、先に役所へ電話をして、必要な持ち物と手順を確認しておくのも一つの方法です。窓口で戸惑う不安が減るだけでも、最初の一歩はずいぶん軽くなります。

二番目にしんどかった手続き:財形貯蓄の解約

結論から言うと、財形貯蓄は「始めるのは天引きで自動、やめるのは書類のやり取り」です。この非対称が、退職後の身には地味に、しかし確実にこたえました。

一般的な制度:退職すると続けられず、種類によって税金の扱いが違う

財形貯蓄は「勤労者」のための制度なので、退職して個人事業主になると、原則として続けることができません。種類は3つあり、一般財形貯蓄・財形年金貯蓄・財形住宅貯蓄に分かれます。

一般財形は、解約しても利息に通常の税金がかかるだけで、大きな問題は起きにくいとされています。一方、財形年金と財形住宅は利息が非課税になる代わりに、年金の受け取りや住宅取得という本来の目的以外で払い出すと、一般に過去5年分の利息へ約20%の税金がかかります。財形年金は目的外の払い出しをすると全額解約になるとされています(金融機関により手続きの詳細は異なります)。

解約や払い出しの手続きは、勤務先の担当部署や金融機関を通じて書類を出す形が一般的です。在職中なら事務室に聞けば済んだことを、辞めた後は自分で調べて、自分で問い合わせて進めることになります。

私の場合:辞めた後の書類仕事は、思っている何倍も重い

私にとって、財形の解約は年金の次にしんどい手続きでした。積み立てていた頃は、その存在をほとんど意識していませんでした。給料から勝手に引かれて、勝手に貯まっていく。それが、辞めるとなった途端に「もう対象外なので手続きしてください」と、こちらが動く側に回ります。書類を用意して、記入して、出す。文字にすればそれだけのことですが、当時の私には、その一つひとつが大仕事でした。

これから辞める方に一つおすすめしたいのは、在職中の比較的動けるうちに、事務の担当の方へ「退職したら財形はどうなりますか」と聞いておくことです。辞めた後の自分は、いま想像しているより疲れています。元気なうちに、未来の自分への引き継ぎ書を作っておくつもりで確認しておくと、後がずいぶん楽になります。財形に限らず、給料から天引きされているものを退職前に一度書き出しておくと、辞めた後に「これはどうすればいいのか」と一人で途方に暮れる場面を減らせます。天引きは在職中の自分を助けてくれる仕組みですが、辞めるときには「見えない契約の束」になって返ってきます。その束を、元気なうちに一度ほどいておく。それだけで、退職後の書類仕事は目に見えて軽くなるはずです。

三番目にしんどかった手続き:住民税の支払い

結論から言うと、住民税は「後払い」の税金です。辞めた後に、働いていた頃の所得に対する税金の請求がやってくる。この仕組みを知らないでいると、辞めた後の6月に届く納付書に驚くことになります。

一般的な制度:前年の所得に対して、翌年に払う

住民税は前年1年間の所得をもとに計算され、その年の6月から翌年5月にかけて納めます。在職中は給料から毎月天引きされているので(特別徴収と呼ばれます)、意識することはほとんどありません。

退職すると、この天引きが止まります。一般に、1月から5月の間に退職した場合は、その年度の残りの住民税が最後の給料や退職手当からまとめて差し引かれます。年度末の3月に退職する場合は、多くがこの形になります。そして本番はその後です。退職後にやってくる6月ごろ、フルに働いていた前の年の所得に対する住民税の納付書が自宅に届き、今度は自分で納めます(普通徴収と呼ばれます)。年度末の3月に退職した場合、辞めてからわずか3ヶ月ほどで届く計算です。このときの金額は、いまの収入がいくらであっても、現役時代の所得をもとに計算されています。

私の場合:天引きの頃には見えなかった金額と向き合う

私も、住民税の支払いはしんどかった手続きの一つです。私は幸い、退職前に生活防衛費として貯金500万円を用意していて、実家暮らしで生活費も抑えていたので、払えなくて困るという事態にはなりませんでした。それでも、天引きされていた頃には一度も意識したことのなかった金額を、納付書を手にして自分で払うというのは、数字以上に気持ちにこたえるものがありました。

これから辞める方への実務的なおすすめは一つだけです。辞める前に、「辞めた後に払う住民税」の分のお金を、生活費とは別に取り分けておいてください。金額の目安は、毎年6月ごろに配られる住民税の決定通知書や、市区町村の窓口で確認できます。ここを見込んでおくだけで、納付書が届く6月の心の負担がまったく違います。収入がまだ安定していない時期に届く納付書は、金額そのものよりも「先が見えない不安」を連れてきます。備えはお金の準備であると同時に、心の準備でもあると思います。なお、収入が大きく減って支払いがどうしても難しい場合には、市区町村の窓口で分割払いや猶予の相談ができる場合もあります(自治体により扱いが異なります)。払えないまま放置するのがいちばんよくないので、苦しいときは早めに窓口へ相談してみてください。

逆に簡単だったこと:退職金の受け取りと、休職中のお金

結論から言うと、お金回りの手続きが軒並みしんどかった中で、退職金の受け取りだけは簡単でした。そして休職中も、制度のおかげでお金の面ではある程度守られていました。ここは「思ったより大丈夫だった」側の話です。

私の場合:休職中の給料と、年度末まで在籍した理由

私は職場の校長のすすめで心療内科を受診し、適応障害という診断を受けて、診断書を提出して休職に入りました。休職の期間は3ヶ月ずつ延びていき、合わせて9ヶ月になりました。休職中の給料は、私の記憶では6ヶ月までは全額が支給され、それ以降は8割でした。

退職日を年度末にしたのは、新年度から個人事業主として塾を始める予定があり、私の記憶では、そこまで傷病手当金を受け取ることができたからです。休んでいる間、収入が完全にゼロにはならなかったこと。それが当時の私にとって、どれほど心の支えになったかわかりません。

一般的な制度:病気休暇・休職中の給与と傷病手当金

一般に、地方公務員にはまず有給の病気休暇があり(多くの自治体で90日程度とされています)、その後は休職に入って、休職1年目はおおむね給与の8割前後が支給される扱いが多いようです(自治体・条例により異なります)。私の「6ヶ月までは全額」という記憶は、この一般的な説明と少しずれているので、正確な内訳は違ったのかもしれません。

また、給与が支給されなくなったり減ったりした期間については、共済組合から傷病手当金が支給される制度が一般にあります。給与が出ている分は調整され、一定の条件を満たすと退職後も引き続き受けられる場合があるとされています。制度の細かい条件は複雑なので、正確な条件は勤務先の共済組合・事務担当に確認してください。

退職金は簡単。ただし失業手当は原則ない

退職金(退職手当)の受け取りは、私の場合、拍子抜けするほど簡単でした。ほかの手続きにあれだけ消耗していたのに、これはほとんど何もすることがなかったと記憶しています。

一方で知っておいてほしいのは、公務員は雇用保険の対象外なので、民間の方のような失業手当は原則もらえないことです。その代わり、退職手当が失業給付の相当額に満たない場合に、差額が支給される「失業者の退職手当」という制度が一般にあります(勤続年数が短い方が主な対象とされています)。勤続数年での退職を考えている方は、教育委員会や勤務先の案内を確認してみてください。

いま辞めたい・休みたい先生へ:手続きの心配は、辞めない理由にしなくていい

結論から言うと、辞めた後の手続きは、しんどくてもどうにかなります。期限を過ぎても取り返せるものがほとんどですし、役所の窓口で「退職したのですが」と伝えれば、必要なことは教えてもらえます。だから、手続きが不安だからという理由で、限界を超えてまで働き続ける必要はありません。

私は高校教員の頃、残業が月200時間、部活動で土日もない生活を続けて、朝の運転中に涙が出るようになりました。部活動から逃げるように小学校へ異動しましたが、朝起きられなくなり、子どもを感情で怒鳴ってしまったこともあります。勤務先を変えても、結局しんどさから逃げることはできませんでした。

ふりかえって思うのは、「もっと病む前に辞めるべきだった」ということです。ぎりぎりまで我慢した結果、多くの人にかなり迷惑をかけることになりました。ただ、この経験を通じて「私は教師には向いていない。組織にどっぷり浸かって言うことを聞くのが向いていない」とはっきりわかったことは、よかったとも言えます。

辞めた後の私は、塾・WEBライター・レザークラフト・非常勤講師を並行して、初年度から教師の頃と同じくらいの収入になりました。何より、時間も健康も人間関係もお金も、自分のコントロール下にあります。私は辞めて「全てよかった」と思っています。

とはいえ、いちばん伝えたいのは「辞めましょう」ではありません。「まず休みましょう」です。教員には病気休暇や休職という制度があります。私も校長のすすめで病院に行き、診断書を出して休むことができました。休職中、復職への圧は全くありませんでした。休むことは逃げではなく、制度として用意された正当な権利です。休みながら、辞めるかどうかをゆっくり考えればいい。私のように休職の終わりに退職を選ぶ道もあれば、回復して戻る道もあります。

もし今、つらさが限界に近いと感じていたら、一人で抱え込まないでください。厚生労働省の「まもろうよ こころ」には、電話やSNSで相談できる窓口がまとめられています。手続きの話は、心と体が少し回復してからで間に合います。順番を間違えないでください。あなたの体が、何よりも先です。

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